9月のはじめは | あなたの酸素ボンベになりたい

9月のはじめは

私は今、アイロン台の上でこの文章を書いている。


私はズボラではあるけど、別に家にテーブルがないわけではない。


なんとなく、この上で書いたら楽しそうだと思った。 そしたら、高さがちょうどいい。実は今までも何度かアイロン台にノートパソコンを置いてみようと思ったことはあったのだけれど、なんとなく気がひけて(たぶん、お行儀が悪いと思ったのだろうね、一応長女だし)結局やめてしまった。


思いきってやってみるもので、静かな部屋の中でアイロン台に向かうのも悪くない。





9月に入ってから、急に涼しくなってきたそこまでちゃんと従わなくてもいいのに、と思う。でも、ちょっとずれると「9月に入ったというのに、まだ蒸し暑いですね」とか言われちゃうもんね。大変ですね。




今日は、用があって電車に乗った。3時くらいだったから割とすいていて、立ってる人はほとんどいない。ぼーっとしていたら、なんだか前にいる男の子の様子がおかしい。18歳くらいか。


メガネかけて、ちょっと髪だけ染めてみましたという感じの子。で、その隣にスカートが短いのが少し目立つくらいの普通の制服を着た女子高生が座ってて、かなり本格的に眠っているようだった。


男の子があからさまに女の子の顔と投げ出された足を交互に見て、なんだか落ち着かない様子。周りの乗客のこともかなり気にしている。でも、

不思議なことに車両一彼のことを注視している目の前のあたしには気付かないんだなぁ。彼は決意を固めたように、腰に付けた携帯ケースからバリバリっと携帯を取り出した(今思うと18やそこらでマジックテープ仕立ての腰携帯ケースもないだろうと思うけど、そのとき焦点はそこではない)。


すいた車内に、マジックテープをはがす音がやけに大きく響く。それもヒートアップした彼には関係ないことのようだ。


ああ、これはやばいな、こいつやらかすな。誰も気付いてないみたいだし、止めるのはあたししかいないな。

こいつバタフライナイフ持ってそうだなぁとか、トウチャンニイイツケテヤルとか言い出しそうだなぁとかいろいろうだうだ考えている間にも、彼の動作はあやしさを増していく。


そろそろ動かないとまずい、と思った瞬間、あんなに真剣に眠っていたはずの女子高生がぱちっと目を覚ました。そしてとなりの男の子を不審そうに眺めた。


シックスセンスが働いたのだろうか、不思議なもんだ。その後、終点に着いて、彼らが別々の方向に歩き出したのを見届けた。