エキゾチック中央線物語
国分寺にある、知る人ぞ知るカレー屋に行った。
その店を一言で表現すると、
「中央線を煮詰めたような店」
おお、われながらなかなかやるではないか。
その店にはつたがからまっていて、ちょっと入りづらい。中に入るとゆるーいかんじの女の子が二人、今にもとけそうなくらいゆるゆるに働いている。絶対にサラリーマン稼業ではないと断言できる、常連と思われるいい味だしたおやじがカウンターに座っている。
暗い白熱灯の照明に小さな小さな店内。
不思議な音楽。
そしてカレーの匂い。
これぞ中央線。
最近「中央線特集」をやっている雑誌や、中央線についての本をよく見かける。
なぜこれほどまでに中央線沿線は人の心をつかむのだろう?
あ、つかんでない?ごめん。
たぶん、そのゆるさ加減だと思う。
そんなことお前に言われなくても分かってるという声が聞こえてきそうですが。
間違っても穴の開いた靴下をはいて表参道には行けない。でも吉祥寺には行ける、と思う。
別に素晴らしいサービスがあるわけでもないけど(むしろ、おい、と言いたくなることもある)、媚びた笑顔を振りまかれることもないし、変な格好をしていて冷笑されることもない。
怪しげなおやじも、四畳半に住んでいるバンドマンも、ギャルソンを着たオサレ美容学校生も同じように存在している不思議さ。
どこからともなく聞こえてくるへたうまなフォークソング。
図々しい焼き鳥屋の匂い。
来るもの拒まず、去るもの追わずの心地よさ。
まるで背伸びしてないあちきを受け容れてくれる、不器用で無口だけど優しい、あなたの恋人のような街。それが中央線沿線。
ステキやん。
人生には青山も必要だけど、西荻窪も必要なのです。
「あなたの阿佐ヶ谷になりたい」でもいいかも。
と、おいしいけど辛いカレーを食べながら考えました。