たまご丼 | あなたの酸素ボンベになりたい

たまご丼

今日の朝、冷蔵庫の中に卵とたまねぎしかなかったのでたまご丼を作った。あ、親子丼の肉が入ってないやつね。

作っている途中で私が中学2年のころに「お付き合い」していた「みちくん」のことを突然思い出した。

付き合うといっても、手をつないで学校から帰る、というものだったから付き合っていたと言っていいのかわからないけど。

それに、「好き」というのも今とはちょっと違う気がする。恋に恋する、というかんじだったと思う。

「みちくん」は周囲が1メートルくらいある「ドカン」というズボンを穿いて、今はやりのボレロみたいなタンランを着て、髪は金髪ボウズという典型的な田舎のヤンキーだった。

無免許でバイクに乗って補導されるわ、他の学校の人とケンカするわ、行いのほうも典型的だったわけですが、そんな彼のことを私はすごく冷めた目で見てた気がする。

「なんでそんなことをするんだろう」って。


一回だけ、「みちくん」の家に行ったことがあるんだけど、家は外から見るとすごい大きくてキレイなのにリビングはものすごく荒れててびっくりした覚えがある。見られたくなさそうにさっと隠してた。

話を聞くとお母さんもお父さんも仕事が忙しくて家にあんまりいないらしい。小さいころからずっとそんなかんじなんだよ、って言ってた。

そのとき、この人はさみしいのかな?って思った。

「親が」とか、「家が」という考え方には素直に納得できないけど、そのときはそう思った。


「みちくん」が好きだったのが「たまご丼」。

いつもは背伸びしたような顔してるのに、たまご丼の話をする時はいつも普通の子供の顔に戻って、うれしそうに話す。

「おれ、たまご丼でーれー好きなんよー、しょうゆかける?おれかける。ほんまうまいよなー。」


その端整な顔だちをもう今はほとんど忘れてしまった。

私が転校してからずっと会ってないし、話も聞かないけど、今頃何してるんだろう。


あたしはたまご丼とか親子丼とかそういう類の料理がすごい苦手で、いつも食べられないくらいマズいんだけど、今日作ったたまご丼はなぜかすっごくおいしかった。


おしまい。